釣具は日々進化しています。ロッド、リール、ワーム。アジングという狭いジャンルの中に限っても、毎年新製品が生まれているほどです。
その中でも僕が最も重要な要素と考えるのはラインです。ロッドやリール、ワームも大事ですが、そんなものより大切でこだわりたい重要なアイテムといえるでしょう。
今回はアジングにおけるラインの特性をご紹介します。
アジングのラインチョイスはちょっと複雑
大抵の釣りにはお決まりとなるラインのパターンがあります。
釣りで使われるラインの種類は「ナイロン」「フロロカーボン」「エステル」「PE」と主に4種類。
そのうち大半の海のルアーフィッシングではPEライン一択。初心者の場合はナイロン、フロロ共に利点がありますが、扱いやすさを考えるとナイロンといったところでしょうか?
しかしアジングの場合、少し複雑になり、どのラインを使う場合も間違いとは言い難いのです。

少し前はナイロンラインはアジングでは不向きとされていたが、近年ではその考えも否定されつつある。ビギナー限定ではあるがな
初心者はナイロン一択ではなく、フロロカーボンも選択肢に入る
初心者はまずショックリーダーライン(リーダー)結ばなくていいナイロンラインかフロロカーボンラインがおすすめです。

リーダーって?

リーダーとはリールについてるラインの先端に結び付けて、ルアーに繋げるラインのことだ。二つのラインの特性を活かし、弱点を補いあうことができるんだ。
ただ初心者の場合は、まずライン同士の結束を覚えるのが大変。慣れれば簡単なのですが、アジングのラインは髪の毛くらい極細で老眼じゃなくても見えにくい。なので、最初のうちはナイロンやフロロで慣れることをおすすめします。
ナイロンとフロロどちらがいいの?
さて、ではナイロンとフロロ、どっちがいいのかという話ですが、これが結構釣り人によって意見が分かれています。
僕の意見としてはフロロカーボンの方がおすすめです。が、とりあえずそれぞれのメリットをお話します。
ナイロンのメリット
基本的に扱いやすいラインを選ぶならナイロンがクセがつきづらいため、初心者向けとなります。
なぜならフロロカーボンはハリが強く、巻きぐせがつきやすいため、メインラインに使うとライントラブルが起きやすいとされるからです。……というのが定説。アジングの場合はちょっと事情が違うのですが、一旦置いておきましょう。
ナイロンのもう一つのメリットとして、柔軟で伸びやすいため、魚にハリを掛けるフッキングがある程度オートマチック。つまり何もしなくてもハリ掛かりしてしまう点です。

なんで何もしなくてもハリに掛かってしまうの?

単純にラインとしてゴムを使っていると考えるとわかりやすい。アタリ、つまり魚が引っ張ると、ゴムは元に戻ろうとする力が発生する。この元に戻ろうとする力で魚の口にハリが掛かるんだ
このハリが掛かりやすい理由から、サビキ釣りでは主にナイロンラインを使います。
フロロカーボンのメリット
まず、先ほどナイロンのメリットで話したフロロカーボンのデメリット。巻き癖がつきやすい点ですが、アジングの場合はあまり発生しません。なぜなら0.8号というフロロカーボンとしては極細のラインを使うため、十分なしなりがあるため、癖があまりつかないのです。
実際僕もアジングデビューはフロロからでしたが、ほとんどトラブルがなかったし、PEに変更してからトラブルの連続でフロロに戻したくなったくらいです。

あれ? なんでPEだとトラブルが起きるの? 確かPEってフロロよりしなやかなんじゃなかった?

ライントラブルの仕組みを知らないからだな。この場合、しなやかすぎるPEの方がライントラブルが発生しやすくなる
話をメリットに戻しますね。
次のメリットはフロロの比重と硬さです。
フロロはすべてのラインのうち1.78という一番大きな比重を持っています。
そのため、水に非常に沈みやすい。アジングはボトムを探ることが多い、且つ仕掛けが軽いので、ラインが沈みやすい方がボトムを狙いやすいのです。
さらに、ある程度の硬さがあるため、PEやエステルほどではないにせよ感度が高い。感度が高いとアジのアタリに対して即座に対応することができ、アジの上顎に掛けやすくなります。

某レジェンド級バス釣り師の人はナイロンの方が感度がいいと言ってたけど?

あれはラインを張っていない状況での話だ。バス釣りではまれに水中に放置するような釣り方があり、ラインをある程度緩めた方がいいシーンがある。その場合、ナイロンだとある程度のアタリは取れるんだ。
アジングでは基本的にラインは緩めず常に張った状態を保つことが重要となるため、ナイロンの緩めた状態でもある程度アタリが取れるという利点よりも、張った状態でも気付きづらいアタリを拾うことの方が重要となります。
その場合は、ラインが伸びない方が感度が高いということになります。
結局ナイロンとフロロどちらがいいの?
じゃあ、ナイロンは悪いのかと言われると一概にそうとも言い切れないのです。トラブルが起きる確率では、フロロよりナイロンのほうが低いのは事実なわけですし。

じゃあ、初心者はどっちを使えばいいの?
あくまで僕の意見ですが、以下のようになります。
・釣り未経験者ならナイロンライン
・他の釣りの経験が多少ありリーダーがうまく結べないならフロロカーボンライン
ナイロンはトラブルも少ないし間違いではないのですが、伸びるラインなので、以下のデメリットが発生します。
・アタリがぼやける。
・乗せの釣りになりやすい。
・劣化が早い
よくある勘違いが「ナイロンラインは感度が悪い」ということです。なぜならほとんどのメーカーや釣具店がそう言ってるから。
いや、間違いではないんですよ。だってナイロンラインって伸びるラインですから。フロロの方が伸び率が低くて感度がいいってのは本当です。
ただ、それはまず「アタリの違い」がわかるようになってからの話であって、ナイロンラインでもアタリは手元に伝わってくるんです。
ただし、アタリがどんなアタリだったのか? どうしてハリが掛らなかったか? といった感覚は伝わりづらいのです。
特にショートバイトでワームが伸びる「うにょーん」という感覚と、上顎にハリが触る「コツン」といったアタリはまず判別不可能だと思います。少なくとも僕には無理です。
こういった現象を表すために僕は「感度が悪い」ではなく「アタリがぼやける」と表現しています。だって最終的には手元に感覚が伝わっているはずなんですから。
そうやってアタリがぼやけると、初心者はいつまでたってもなぜアワセが決まらないかの判別がつかなくなります。だから使うなら伸びにくいフロロカーボンがいいし、リーダーが結べるならPEやエステルとなるわけです。
だから、僕はフロロカーボンが初心者におすすめなのです。ただもちろんナイロンを選ぶことも間違いではないことを理解しておいてくださいね。
脱初心者ならPEかエステルライン
リーダーが結べるようになったらPEかエステルラインという選択肢になります。
その理由の一つはナイロンラインの説明で話した通り、ラインの伸び率が高いとアタリがぼやける、一般的にいう感度が悪いという状況になります。
では一番伸びないラインとは何なのかといえば、「PEライン」、その次に「エステルライン」となります。
ここで、各ラインのスペックの違いを見てみましょう。
素材 | ナイロン | ポリエステル | フロロカーボン | PE |
名称 | ポリアミド | ポリエチレン テレフタレート | ポリフッ化 ビニリデン | 超高分子量 ポリエチレン |
比重 | 1.14 | 1.38 | 1.78 | 0.97 |
吸水性(%) | 4.5 | 0.4 | 0.04 | 0 |
あり | ややあり | ほぼなし | なし | |
風合い | 柔らかい | 硬い | やや硬い | しなやか |
結節強力 直強力比率 | 約85% | 約90% | 約70% | 約40% |
伸び率(%) | 23-25 | 20-22 | 20-25 | 3-5 |
融点(℃) | 215 | 255 | 173 | 148 |
屈折率 | 1.53 | 1.65 | 1.42 | 1.51 |
アジングでエステルラインやPEラインが人気なのは主にこの理由。伸びにくさによる最強の感度によるところが大きいです。
さらに、現状エステルラインが一番人気な理由、特にPEとの差別化が起きている理由が「比重」の違いです。
比重がポイント! 一番人気、エステルラインの利点
比重というのは質量と体積の比率のこと。ちなみに重量とは少し違います。
比重が違うことによるラインの違いは主に以下の通りです。
・比重が小さいと風や潮の流れに流されやすい。
・比重が大きいと風や潮の流れの影響を受けにくい。
物体の沈みやすさは液体と物体の比重の差。比重が液体より小さければ浮くし、比重が大きければ沈む。特に数字の差が大きければ大きいほど、沈みやすくなります。

真水なら比重は1ですが、海水の場合塩分などさまざまなものが混ざっているため比重は1.03~1.04。そしてPEラインの比重が0.97。なので海水に対して浮きます。
対してエステルラインの比重は1.38。なのでラインは沈みます。
感度を上げるには、なるべくロッドの先端とジグヘッドまでを糸電話のように張った状態を保つことが大切です。エステルラインは適度に沈んでくれるため、ラインが張りやすくアタリがはっきりします。
なお、フロロカーボンの場合は沈みすぎるため、エステルよりは感度がはっきりしづらい、ということになります。
また、比重は大きければ大きいほど、風や潮に流されにくくなります。そういう意味でも感度がよいといえるでしょう。
ただし、ジグ単以外ならPE一択です。エステルの細ラインだと下手すればキャストしただけで切れます。
PEラインをジグ単で使う利点
一方ジグ単でもPEを使う人は結構います。その多くの理由は強度の問題。
エステルラインはどうしても強度に問題が発生します。アジをしかも堤防で釣るなら十分すぎる強度はあるものの、海にはアジだけがいるわけではありません。プランクトンを食べている魚なんてとんでもない数います。
特にナイロンラインやフロロカーボンに比べると伸びないラインのため、急激なショックに弱くなります。
どういうことかというと、例えば1㎏の負荷で切れるナイロンラインとエステルラインがあったとして、どちらも1㎏の負荷がかかった瞬間に切れるわけではありません。
まずはラインが伸びていきます。そして、完全に伸びきった瞬間に切れます。エステルラインがすぐに切れるといった話が多いのはこれが理由です。ナイロンやフロロは1kgの負荷が掛かった瞬間はじわじわと伸びていくだけですが、エステルは伸びることなく切れますから。

ん? ということはPEはもっと伸度が低いわけだら、もっと早く切れるのでは?

その通りだ。だが同じ1kgの負荷で切れる強度だった場合の話だ。だがPEは同じ細さでも別次元の強度を誇る。やり取りに注意してさえいれば、そこそこのサイズのシーバスを抜き上げることだってできるぜ。有名ライトゲーマーの「りんたこ」さんの動画にちょうどわかりやすい映像があったぜ。
「りんたこ」さんのこの動画のようなケースはさすがにレアケースですが、可能性はあるわけです。こういうときもPEの強度があれば取り込むことができるというわけです。
また、PEライン最大の問題点である潮馴染みの悪さを緩和した新ジャンル「PFライン」の「THE ONE アジング」など、新技術によって使いやすくなったラインもあります。
個人的にはお気に入りのラインなので、PEラインに迷ったらこれがイチオシです。
シンキングPEという考え方も!
世の中にはシンキングPEという沈むPEラインもあります。これはアジングではどうなのでしょう?
結論からいうと一部の釣り方以外ではオーバースペックになりがち。
シンキングPEは沈ませるために素材の一つに高比重素材を使ったもので、比重は1.1~1.4くらいとなります。
ですが明確な弱点もあり、どうしても太くなるのです。僕が知る限りだと0.3号が一番細いのですが、現代のアジングではこれでも太め。太いと結局潮の流れや風に流されやすくなり、せっかくのシンキングPEの高比重が活かせない。それなら普通のPEで0.1~0.2号を使った方がマシです。

だったら、フロートやキャロライナリグで使うのはどう? 確かPEの0.3号~0.4号を使うでしょ?
楓も勉強していますが、それもちょっと懐疑的です。フロートやキャロでPEを使うのは主に高切れ防止のためですが、シンキングPEは同号数のPEよりは弱くなるのです。しかもフロートはもちろんキャロも重たいながらスローで沈むため、比重によるデメリットが発生しずらい。
言ってしまえば器用貧乏となりがち。ただ、ベイトアジングの場合どのみち太めのラインを使う必要があるため、シンキングPEがおすすめです。
PEやエステルを使うならラインの結束を覚えよう

じゃあアタシもPEライン使っちゃうぞー

チャレンジ精神は結構だがリーダーの結束をまず覚えないとな
最初のうちは手持ちのライン同士を結束して練習してみましょう。使うのがもったいないなら100均とかで補充するといいですよ。
おすすめはトリプルエイトノットです。
また、リーダーを長めに取りたい場合はFGノットがおすすめです。
まとめ ラインの特性を正しく把握して使いこなそう
いかがでしたでしょうか? ポイントをまとめるとこうなります。
- ナイロンラインは釣りをしたことがない人でもトラブルがすくない。
- フロロカーボンはリーダーを結べない人でも使いやすい。
- エステルラインは感度抜群! 今のアジングの主力メンバー。
- PEラインは頑丈! アジ以外の魚が来ても安心!
道具を使いこなす最大のポイントは、その道具の特徴を理解すること。特にラインはロッドやリールと違ってこだわったとしても数千円でグレードアップすることができます。
釣果に伸び悩んだら、自分にあったライン選びをしてみましょう。