海上保安庁によると、水難事故の被害者のほとんどが遊泳中か釣りをしていた人だそうです。
令和5年の釣り中の水難事故被害者は246人。うち死亡、行方不明者は87人。年々減っては来ているものの、近年の釣り具業界の状況を鑑みると、ただ釣り人口が減っただけとも言えます。
死者数を一人でも少なくするにはどうすればいいのかと考えると、やはり正しい知識を伝えていくことだと思います。そこで今回は、水難事故を防ぐために必要なことを考えてみようと思います。
実は一番危険? 堤防の恐怖!

アジングなんて堤防でやるものでしょ? 堤防とか危険もない場所じゃん

とんでもない! 堤防は危険な場所だぞ!
親方の言う通り。堤防は下手すればその辺の磯より危険なところです。
まずは足元からすでに身長以上の深さがあること。通常の水辺の場合は陸から沖にかけて徐々に深くなるのに対して、堤防は一気に深くなるため、最初から足がつきません。
次に、上る場所が極端に少ないこと。海から見上げれば、堤防はほとんどが断崖絶壁。一応はしごが設置されているところもありますが、通常はそこまで泳げません。

でも、私水泳で50mクロールできるよ?

逆にいえば「波がなく、泳ぎに特化した服を着て、足がつく環境で、50mしか泳げない」んですよ。そう言った慢心が多くの死亡事故を生み出しているんです

そ、そっか……うぅ……確かにちょっと舐めてたかも
なんとか陸に戻ろうとしてパニックになり、もがいている間に波に流されて堤防のコンクリやテトラに激突。骨折してまともに動けなくなりながら窒息死が関の山です。
むしろ、足元限定でいえばまだ足がつく可能性が高い磯の方がマシとすらいえます。それなら波が落ち着いていれば、まだ助かりますから。事実磯で落水した人が助かった理由も運よく波が緩かったので這い上がれたという声が多いです。それだけ堤防は危険なエリアなんです。

堤防が安心といわれる理由の多くが、足場が安定しているという「気を付ければまず落ちない」ってだけの話で、気を緩ませれば落水する可能性が高い。だから、一瞬の油断が命取りになると気を引き締めて行動すべきだな
堤防以外の注意点
危険度MAXな磯の死亡率は意外と少ない……けど注意?

そう考えると、磯場って案外安全なのかも?

……当然ですが、磯場は普通に危険ですよ
彩夏の言う通り。別に磯が危険ではないというわけではありません。
波が落ち着いていればと前述しましたが、そもそも磯は比較的海が荒れやすい。しかも整備されていないから足場は不安定だし、十分気を付けていても足場が崩れて一気に海へ引きづり込まれるケースも少なくはありません。
ただ、磯釣り師もそのへん分かっているから、注意するのが当たり前。そんなこともあり死亡事故は意外と少ないんですよね。

磯で釣りをする場合は、きちんと準備したうえで釣りを楽しみましょう。
サーフは離岸流だけは押さえておきたい
サーフで気を付けるべきポイントは離岸流です。
離岸流とは、沖から陸に向かって流れる向岸流とは対照的に、沖へと流れていく流れの事。離岸流の速さは毎秒2mともいわれており、油断して離岸流に飲まれると高確率で陸に戻れなくなってしまいます。
ただし、離岸流は非常に釣果が高いポイントでもあります。なので、フロートリグなどで遠投し、確実に波にのまれないと言える場所から狙いましょう。
川はカケアガリに注意!
川での注意点は釣り人にもなじみ深いカケアガリです。

カケアガリって?

深さが崖のように急に深くなる場所の事です。釣種に限らず、釣果が高いポイントですよ
ただ釣り人にとっては嬉しいカケアガリが、多くの悲劇を生み出してきたのは事実です。
実際に、足がつくからといって安心して水辺を泳いでいるとカケアガリに足を取られて一気に流されるという事件は川ではよくあること。
プロの水泳選手でも川では流されてしまうそうなので、川で遊ぶ場合は絶対に川の中腹に近づかないか、そもそも水の中に入らないでください。
水難事故を防ぐ最初のステップはライフジャケット
水難事故を防ぐために大事なことはやはりライフジャケット。
実際水難事故にあった時に死亡する可能性は、ライフジャケット未着用時は3倍とされています。

でも、おこづかいなくてライフジャケットのような高いもの買えないよ……

それでもそれなりの値段のものを買って欲しいところですが、最初は激安ライジャケを身に着けて釣りをする方が、未着用で釣りをするよりは100倍マシだと思います。大事なのは、安全に対する意識ですよ

磯の場合ですが、岩が原因でライフジャケットの膨らむ部分に穴が開く可能性があるので、ライフジャケットの中でも固定式、いわゆるゲームベストなどの方がいいですよ
着衣水泳の基本は”泳がないこと”
もし、落水した場合、どうするのが一番なのでしょう?
最も大事なことは、泳がないこと。これが着衣水泳の大前提です。
泳がず、ライフジャケットに身を任せて、周りの人に気付いてもらうように行動しましょう。ライトが生きていれば光で、笛があれば音で周りに気付いてもらいましょう。
そして、無理に岸に近づかないこと。下手に近づけば岩場にぶつかってそれまでです。

逆におぼれている人を見つけたら?
まず速やかに118番、119番に通報しましょう。どのような事故か、事故の場所、人数、自分の名前と連絡先を聞かれるので、落ち着いて話しましょう。
緊急用の浮き輪があればそれを投げ入れた方がいいですが、ペットボトル、クーラーボックスなどでも代わりになります。そういったものを投げ入れて救助者の浮力を確保するのも適切です。
泳げるからといって助けに行くのはNGです。前述した通り、着衣しながら海や川での水泳は、かなり危険です。浮き輪を投げ入れた後も、無理に助けようとせず、その場で浮かんでもらった方がいいです。
まとめ アジングと舐めちゃいかん
いかがでしたか?
アジングは比較的堤防での釣りが多く、手軽で足元が安定しているため、油断も起きやすい釣りです。
常に危険と隣り合わせなんだと思って、気を引き締めて行動しましょう。
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