本来人とは警戒心が強い生き物です。相手が騙そうとしていると高い知性で推察し、また本能的に察することもできます。
その知能は、哺乳類の中でも非常に高度な知能を持つチンパンジーですら圧倒的に凌駕するほどです。
オレオレ詐欺が認知症気味のおじいちゃんおばあちゃんにしか理由も通用しない理由も、おそらくは人間の知能が高度すぎる所以でしょう。我々がこよなく愛するアジですら目の前で擬似餌をチラつかせたら、パクついてしまうのだから。
しかし、そんな人間の一種である釣り人は、なぜか釣具店に訪れると異常なほど散財します。まるで一瞬知能がチンパンジーレベルまで落ちたように、目の前のルアーはおろか、高価なロッド、リール、はては釣りに必須ではない帽子やフィッシンググローブにまで食いつくのです。これは雑食性が高すぎることで危険視されているブラックバス級の食いつき方とも似ています。
なぜ釣り人はここまで散財してしまうのでしょう?
実は僕は家電量販店初めいくつかのお店に勤めた経験があります。その経験から、どうして人は釣具屋でお金を使ってしまうのか、検証してみましょう。
なお、今回の内容はほぼ「散財したタヌキの言い訳」です。釣りのテクニックは一切皆無となるのでご注意ください。
秀逸! 価格設定の罠
釣具セールスとしてかなり優秀なのがその価格設定。
人はだいたい1000円以下だと金銭感覚がマヒしがちです。よくある980円という価格設定はまさにこの金銭感覚のバグを狙ったものです。980円と1000円だとたった20円の差しかありませんが、980円だと見た目のお得感が増すわけです。
実際に釣具店に行くと1000〜1100円の釣具は非常に少なく、大体980円あたりの価格から上は1190円などの価格帯が多いです。
また、釣り具はこまごまとした仕掛けが多いため、「ついでにあれも買っとくか」と思いやすく、このついで買いが積み重なってお金を使わせるわけです。
さらに、微妙な価格差も見事です。たとえばジグヘッドで680円の商品があったとして、「少し高いなー」と思ったとしましょう。そこに480円の商品が横にあるとします。「それならこっちの方が安いや」と思っていくつか買ってしまうのです。
家電量販店で例えるなら電池が分かりやすい例。クソ高いけど性能はお墨付きなエボルタよりはメーカー品の中で一番安い電池の方が大抵売れます。だって電池にこだわるのなんてミニ四駆くらいなもんですから。
ただし先ほどのジグヘッドの場合は同じ200円の価格差でも、単に封入数による価格差のケースが考えられ、実際に単価を調べると案外似たり寄ったりだったりします。こういうところ案外抜け目ないです。
材料費だけが価格じゃない! 付加価値の重要性
タングステンのような、どうしても単価が高くなるものや、ハードルアーだと技術的に高価になりがちなものもあります。ただ、そういった理由があると「まぁ仕方ないなー」と思ってしまう。このように「この機能(もしくは素材)があるなら高いでも仕方ないか―」という購入理由になる価値のことを「付加価値」と呼びます。
特にハイエンドクラスのロッドが高い理由は、この付加価値にあり、最新テクノロジーをたくさん搭載しているため単価も高くなるわけです。「単純に材料費が高いから価格が高くなる」という理由も確かにありますが、それだけでは儲けが出ないばかりか、よりいい商品を生み出すための研究もできなくなるため、釣具業界は先細りする原因になりかねません。
たまに原価だけに注目して知ったかぶりをし、さも「お金儲けをしたいだけの理由で、卑しくだまし取っている」かのような言い方でメーカーさんを批判する人を見かけますが、決してそれだけが理由ではないということをお忘れなく。
また、家電などでも広く使われている手法ですが、10年前くらいの技術をエントリーモデルに搭載するケースも多いです。10年もたてばさすがに開発費以上のお金は回収できているため、エントリーモデルに搭載しても十分収益が取れるわけです。
「なんでこの商品高いんだろ?」と思ったら今回の「付加価値」のお話を一度思い出していただければ幸いです。
卑劣⁉︎ 生産数の恐怖
メーカーによっては大量生産が難しいケースも多いです。特に個人でやっているようなメーカーさんだとなかなか安定した生産数を確保することができません。
「こんなメーカーあるんだ! あの店なら売ってるかな?」と思って置いていない場合は、結構このパターンが多く、しかも一度売り切れたら、しばらく品切れになることも珍しくなりません。
さらに近年では卑劣な転売ヤーが先に商品を先に買ってしまうことがあります。
そのため「今買っておかなければ、次いつ購入できるかわからない」と考えてしまい、釣り人はお金を使ってしまうわけです。実際その通りですし。
残酷? 限定品、福袋の魔力
「限定品や限定セット、お得」という言葉を聞くと人は洗脳されます。これはロボトミー手術もある意味真っ青な現象と言えなくもないと、筆者個人としては思っているようないないような。ともかく、限定品にお金を使うことはもはや仕方のないことなのです。
特に限定品や福袋には、いつもは売っていないカラーのアイテムや、ケース、トートバッグなどをセットにすることがあり、これによって脳に大量のドーパミンが分泌されることにより購買欲求が促され、気が付けばお金を使っているわけです。
では、本来はお得でもないのかと言えば、そうでもない。メーカーや釣具店には利益マイナスクラスの限定品や福袋がかなり多く。ある意味販売側も新年テンションでドーパミンが駄々洩れるほど興奮しているのかもしれません。
なお、個人販売者の中には、完全に騙すためだけのために福袋を作るケースもあります。まずは、その販売者が信頼できるか調べてから購入しましょう。
まとめ 結局は買った方が幸せ?
実際に商品を購入して釣果につながるかは、はっきりとは言えません。ただ、釣果が上がる可能性があることも否定できない事実です。
まずは自分の財布とよく相談して、無理のない買い物を心掛けましょう。
ちなみに僕はついこの間、5000円前後の予算で2万円の散財をしました。つまり今回の記事はただの言い訳です。
今回のまとめ
言い訳は見苦しい。
また、この「アジンガーのたまりば」で解説などに使用するキャラクターを作成していましたが、ようやくおおよその形になりました。
釣りするサイボーグねこ「だいふく親分」と初心者アジンガーの「安治平楓」です。二人を加えることで、より親しみやすいブログ運営を目指していこうと思っています。
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